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2016年8月

2016年8月29日 (月)

FT-401S レストア

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YAESU FT-401S ファイナルの6JS6が壊れたので修理して欲しいとの依頼があり、お預かりしました。非常にきれいな個体なのですが、40年以上経つ無線機であり、診断していくと多数の不具合が見つかり100%完璧にとは行きませんでした。

エンブレムはFT-401Sですがファイナルは2本、しかしオプション類は入っていないという構成です。

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まずは終段管6JS6Cが壊れた理由、それはすぐに解りました。過去に実施した当方の401Dと同じ故障です。ドライバー段からカップリング用マイカコンデンサの絶縁不良⇒Cg電圧上昇⇒IP増大⇒真空管が不良⇒Sg抵抗焼損・・・この故障パターンです。

13MΩと大きな値のように見えますが、真空管の場合、グリッドのインピーダンスは非常に高いため、このリークは致命的です。

同様にドライバー管12BY7AのカップリングコンデンサもNGでした。これまでにいくどとなく事例がありますが、YAESUのキャラメル型マイカコンデンサは、ほぼ100%絶縁不良になるようです。

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オーナー様はNECの6JS6Cを手配、同梱いただきました。当初はGE製のはどうかと打診が有ったのですが、GE製はCpgが大きくて中和が取れない可能性があります。

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これは何をやっているところかと申しますと「中和」を取っているところです。YAESUの取説に書いてある方法で右往左往やりましたが、どこが中和ポイントなのかはっきりしないため、Sgを接地しファイナル動作を止め、ドライブを掛けて出力側に出てくる信号をスペアナで見て最小になるようにして実施しました。要するにTRIOの実施方法を応用したという訳です。これで、確実に中和点に合わせこむことができました。
401系の中和は重要で、ヘタなことすると発振したりハイバンドでパワーが出なくなったりするので要注意です。

401d_05 電源部を確認していたところ、一つだけダイオードを交換してあり、これは前例と同じく他も壊れてヒューズが飛ぶ可能性が高いため、8本全て交換しました。ここに使っているダイオードは2SC460と同じく、リード線の腐食が内部に進行して不良となるような感じです。

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SSBモードにしてテストすると、キャリア漏れが酷く、1W以上ありサイドバンドサプレッションは20dBぐらいしか取れていません。これではダメ、キャリアバランスを再調整しようしたのですが、追い込むことができません。

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その原因は、ソリッド抵抗の経年変化による抵抗値増大でした。2.2kΩが3.4kΩになっていたり、47kΩが60kΩになっていたり・・・。結局、バラモジ7360のキャリアバランスに関連する抵抗8本全て交換してようやく、40dB以上のサプレッションを得ることができました。

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更にチェックしていくと21MHz, 28MHzで受信感度が落ちることがあり、調べたところバンド切り替えスイッチの接触不良がありました。接点洗浄や復活剤吹付けをやったみたのですが、接点自体が劣化しているようで、完全に修復することはできませんでした。

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ファンの音が大きいので、分解してベアリングに注油しようとしたのですが、イモネジが固着してしまって外すことができませんでした。

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今回交換した部品です。
ここまで1週間以上かかってますが、このクラスの古い無線機は、半年以上かけてゆっくりとリストアしていくのが良さそうです。

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2016年8月17日 (水)

FT-620B レストア

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YAESU FT-620B これも結構古い機種ですね。当局の開局時代に遡ります。
ダイヤル表示が合わない、全体的な再調整をして欲しいとのことでお預かりしました。

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周波数のドラム表示がズレて、全く読めません。







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ドラム表示の固定イモネジを回し、読み取れる範囲にしても帯域が大きくズレていてダメです。VFOのトラッキング用トリマーを回しながら、直線性の良いところに合わせこみます。これ、結構テクニックが必要な「メカニック作業」です。

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プリミックスの水晶発振器も周波数がズレてました。しかし、水晶自体の特性が変化して64.5MHzちょうどにトリマーで合わせこむことができず、どうしても4kHzズレてしまいます。そこで、VFO側でこの4kHzを吸収してしまう戦法に切り替えました。(VFO は5.0~5.5MHz、これを4kHzずらせるってことです。)


バンド別のプリミックス水晶を全て4KHzずらせることで解決です。アナログダイヤルなので、完全な直線性を得ることは難しく、正確な周波数を読みたいんだったら、この機種はマーカーが必須なようです。

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オーナー様から切れていなくとも照明用電球の交換またはLED化要望が有ったのですが、LED化は見送り電球を交換しました。この電球と同じ広い範囲を照らすにLED化はちょっと難しいです。また、S-9-1というタイプの電球なので現在でも入手は容易です。

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裏面の足がグラグラ状態で、これもできればなんとかして欲しいとの要望がありました。しかし、これを完全に修正するには、板金と塗装が必要であり、当方はそこまでの技量が無いので、ネジバカになったΦ4mmビスをΦ3mmの長いのに交換して、ナット止めすることで対応しました。

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最終調整を実施していたら、AMが1Wぐらいしか出ません。いろいろと調べたところ、AM変調を行っている石(2SC372)のゲインが落ちるとこのようになるとの情報があり、もう少しゲインがある2SC1906に交換すると共にベースカップリングコンデンサを少し大きな容量にするため、追加することでキャリアレベル6W以上出るようになりました。


YAESUお得意の、配線図と実際が異なるというのがあちこちにあり、結構たいへんでした。交換したパイロットランプも、ムギ球を使っているものもあるようです。他、全体の感度確認、筐体/パネルの洗浄を実施し完了としました。

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2016年8月 5日 (金)

TS-680 PLLアンロック他

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KENWOOD TS-680S (50W仕様) ピッピとエラー音がして、送受信できないバンドがあるとのことでお預かりました。当機種はお初になります。

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10.5MHz以下の周波数で写真のような状態となり、モールスで 「UNLOCK」 と符号を発音します。バンドチェンジしてもダイヤル回しても、発音してまるで「早く直してくれ!!」と訴求しているようです。自己診断機能を付けたケンウッドさんは、なんだかオチャメですね。

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10.5MHz以下のみがロックしないので、その周波数帯域に該当するVCOを調整したらロックするかと思いきや、いくら調整してもロックしません。フリーランで元気に発振していますが、VCO電圧が全く加わらないのです。悩むこと数時間、全わかりません(T_T)、他のVCOはロックするのに。

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仕方無しに周波数構成ブロック図を眺めて勉強です。非常に複雑な構成となっており、なんとワンクリスタル制御。36MHzのリファレンスで全ての発振を作っていました。普及機とは思えない構成です。
ようやく気が付きました。

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バンドによって、位相比較している周波数が異なるんです。よって、メインのVCO (配線図中ではVCO1) ではなく、比較される側の信号が来ていない、または弱くてロックに引き込むことができない・・・と。

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推測は当たっており、下位ループからの信号が弱く、その原因は、なんとBPFのズレでした。これらのBPFを再調整することで、ようやくロックしてくれました。
(ICOMもYAESUもこんなややこしいことはしていません。IC-760PROでさえ、ワンクリスタルじゃないんです。)

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その他もいろいろとズレており、50MHz帯は送信で3W程度しか出なく、写真のトリマー再調整で10W出るようになりました。

KENWOOD機は、メーカー修理が効く場合が多いので、古い真空管式を除いてめったに当方では修理しないので、サービスマニュアル探しから内容の理解までと結構悩んでしまいました。メーカーによってその回路の設計方針のようなものを垣間見ることができた修理でした。

パネル、筐体の洗浄を実施し完了としました

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2016年8月 1日 (月)

FT-625D 送受不可 表示点滅

625_00_2 YAESU FT-625D 初顔機種です。デジタルカウンター表示が全て点滅して送受できないとのことでお預かりしました。オーナー様は、PLLアンロックを疑われましたが、当機種はPLLを使っておらず、プリミックス方式のオーソドックな回路でした。

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CALL」にすると51MHzと表示はFIXされます。よってVFO系が何か不具合あるのではと調べたのですが、問題ありません。回路を追ってようやく解ったのが、CHANNELスイッチの接触不良でした。接点洗浄で送受可能となりました。

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アナログダイヤル照明が点灯せず、せっかくの赤LEDと青のコントラストが台無しに。切れたムギ球をLED化しました。交換には一旦、カウンターユニットを取り外す必要があります。

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全体の再調整、動作確認をしていると、USBに限って、カウンター表示が2kHz程度ズレており、調整で合わせこむことができません。
LSB, USB, CW, FMすべてカウンター表示を調整するという、今では考えられない回路になっていました。
(この発振器は、受信回路には何ら関係ありません)

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水晶発振子が長年により低い周波数へ経年変化してしまったようです。そこで、トリマコンデンサで合わせられるよう、パラに接続してある47PFを30PFに変更することで、合わせこみができるようになりました。

その他、キャリアポイント(LSB側が大幅ズレ)、キャリアバランス等を調整し、完了としました。ファイナルに余裕があるので、パワーが良く出るので、この機種は重宝がられ未だに人気機種ですね。

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