YAESU FT-1000MP 3.5MHzで送信すると、リセットがかかってしまう、他もおかしいとのことでお預かりしました。これまでになく大変なことになっており、また修理完了まで1ヶ月近く費やしてしまいました。
到着して症状をチェックしてみると・・・一見、正常に見えますが。
・3.5MHz 送信するとICが振り切ってプロテクションがかかりリセットされる。
・7MHz 80Wの出力が出る。しかし、上記の写真のとおりLSB, USBでマイク
を繋がないで、送信にするだけで出力される。
・10MHz以上 同様に送信するだけで160W以上の出力が出てくる。
これはおかしい、スペアナで観測してみると、バンドを変えようが、モードを変えようが、ダイヤルを回そうが、8.2MHz帯の単一キャリア電波が送信されてパワーコントロールも何も効きません。
アマチュアバンドでないところで、強力な信号が送信されてしまうといういまだかつて経験の無い恐ろしい症状です。
2nd IFが8.2MHzに近いので、通りぬけを増幅しているのかと PA部入力コネクターを抜いてみましたが、同じです。この段階で
PA部に問題があると判明できました。
PA部を開けて目視チェックと電圧チェックを行うと、ドライバー段2SC3133の片方がコレクター・ベース間ショート。それに伴って、ベースに入っている寄生発振防止抵抗が焼損してしまってました。
Push-Pullになっているドライバー段の片方が壊れ、片方が生きていたので生きているほうに正帰還が発生して強烈な発振をしていたということです。周辺回路定数から、その共振周波数が8.2MHzであったということになります。
また、7MHz帯用LPFのコイルが焼けてしまってます。
<2SC3133入手の顛末苦労>
オーナー様はパーツ入手は全ておまかせするとのことで丸投げされました。
2SC3133はディスコンになって入手困難です。まずは、国内の在庫を調査してくれる会社に見積もりをしたところ、
5個で28,000円(税別)ととんでもない価格が提示されました。
これは高すぎます。
そこで、ebayより探して
アメリカ東海岸、ニュージャージ州へ発注。個人輸入、10日ぐらいかかりました。
届いたのがこれ。
なんだか怪しさもあるが、テスターでチェックしたところピン配列も合っているし、さっそく、取り替えてみることに。
電源を入れたとたん、
ベース・エミッター間がショートとなり壊れてしまいました。ニュージャージから届いたものが一瞬でお亡くなりに。
取り外した
三菱のものと比較して、明らかにおかしいです。
SNSを通じて呼びかけてみても、どうしても
2SC3133はみつかりません。そこで、
2SC1969なら持っていると名乗りでた方に譲っていただきました。
2SC1969はピン配列が異なるので、ケースを絶縁シートで浮かせて、ピンを曲げて取り付ける必要があります。結構難しくて絶縁チューブを入れることはできなく、空中配線となりました。
LPFのコイルも、T-68-2を入手して巻き直しです。LCRメーターで測定すると、同一回数巻いたのだが、インダクタンスは少し大きくなりました。
(発熱でコアが劣化したため?)
これでようやく、正常なパワーが出るようになりました。スプリアスもOKです。
<米国からの2SC3133は何か? >
スグに壊れてしまった米国からの2SC3133、これは何か。拡大してみると、三菱のロゴが入っているものの、真ん中に E の文字が書いてあります。どうやら、これは台湾のELEFLOW社製を偽って三菱製としたフェイク品だということが解りました。
台湾⇒米国東海岸⇒日本の自宅 と渡ってきたようです。米国にあるからといって信用してはならないようです。
※今回で懲りたので、当方での個人輸入まで実施してパーツ調達は実施しないことと致します。あまりにも、リスクが大きすぎ仕事が進まないからです。
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