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2016年3月

2016年3月26日 (土)

FT-1000 HI SWR点灯, ATU収束しない

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YAESU FT-1000 送信に下記のような不具合があるとのことでお預かりしました。

・パワーが50W程度しか出ない。
・Hi SWR点灯する。
・ATUが収束せず、あちこち動きまわる。


とりあえず当方で症状確認です。

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ダミーロードを接続しているのに、HI SWR, 無線機内蔵のSWR計は振り切りに近くなってしまってます。ATUも確かに収束しません。

ダミーを使ってもSWRが高く表示されるのは、SWR検出回路以降で何らかの不具合があることは間違いありません。パワーが出ないのはSWRプロテクションがかかっているから。

まずは当機種の定石であるATU切り替えリレーを疑ってみましたが、問題ありません。だとするとSWR検出回路そのものが不良と断定です。

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怪しいのはFWD, RWD検出ダイオード。

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回路はこれ。検出ダイオードをテスターで測定してみたところ、FWD, RWDともに逆方向でリークが大きくNGであることが判明しました。

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1SS101 というショットキーバリアダイオードで、入手困難でしたがなんとか手配できました。

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4本共交換することで、ばっちり200W出力しATU, SWR計も正常となりました。

このダイオードの故障はネット検索すると結構あるようです。こちらはFT-1000MPで。

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2016年3月22日 (火)

1,800,000アクセス達成

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いつも弊プログへの来訪ありがとうございます。

月に3回程度しか更新していないのに、180万PVを達成しました。平均で約1,000/dayのアクセスがあります。GoogleやYahooで「アマチュア無線機 修理」で検索すると、上位に出てくるよって言われてますが、検索での表示だけで実際は修理件数をこなすことができてないのも確かです。

マニアックなこのブログがなぜ、こんなにアクセスあるのかもよくわかっていません。記事に興味を持たれるのか、それとも修理して使いたい無線機がたくさんあるのかは。

執筆に関しては、ただ部品を交換して直っただけではなく、故障するプロセスを理論的な流れて推測して「なぜ故障したのか、故障による他回路の影響はどうか」をできるだけ書いているつもりです。

例えば「電解コンデンサは消耗品だから年数が経ったものは全数交換すべき」というのか、まかり通っており、そういう修理手法も間違いではありません。しかし、私のこれまで修理したもので電解コンデンサが不良となり動作しなくなった例はほんの少しです。やみくもに部品を交換して修理するのではなくピンポイントで故障箇所を特定していくポリシーは、これからも続けていきたいと思います。

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2016年3月21日 (月)

FT-1000MP とんでもない所で送信する

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YAESU FT-1000MP  3.5MHzで送信すると、リセットがかかってしまう、他もおかしいとのことでお預かりしました。これまでになく大変なことになっており、また修理完了まで1ヶ月近く費やしてしまいました。

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到着して症状をチェックしてみると・・・一見、正常に見えますが。

・3.5MHz   送信するとICが振り切ってプロテクションがかかりリセットされる。

・7MHz    80Wの出力が出る。しかし、上記の写真のとおりLSB, USBでマイク
        を繋がないで、送信にするだけで出力される。

・10MHz以上 同様に送信するだけで160W以上の出力が出てくる。


これはおかしい、スペアナで観測してみると、バンドを変えようが、モードを変えようが、ダイヤルを回そうが、8.2MHz帯の単一キャリア電波が送信されてパワーコントロールも何も効きません。

アマチュアバンドでないところで、強力な信号が送信されてしまうといういまだかつて経験の無い恐ろしい症状です。


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2nd IFが8.2MHzに近いので、通りぬけを増幅しているのかと PA部入力コネクターを抜いてみましたが、同じです。この段階で PA部に問題があると判明できました。

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PA部を開けて目視チェックと電圧チェックを行うと、ドライバー段2SC3133の片方がコレクター・ベース間ショート。それに伴って、ベースに入っている寄生発振防止抵抗が焼損してしまってました。

Push-Pullになっているドライバー段の片方が壊れ、片方が生きていたので生きているほうに正帰還が発生して強烈な発振をしていたということです。周辺回路定数から、その共振周波数が8.2MHzであったということになります。

また、7MHz帯用LPFのコイルが焼けてしまってます。

<2SC3133入手の顛末苦労>

オーナー様はパーツ入手は全ておまかせするとのことで丸投げされました。

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2SC3133はディスコンになって入手困難です。まずは、国内の在庫を調査してくれる会社に見積もりをしたところ、5個で28,000円(税別)ととんでもない価格が提示されました。
これは高すぎます。

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そこで、ebayより探してアメリカ東海岸、ニュージャージ州へ発注。個人輸入、10日ぐらいかかりました。

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届いたのがこれ。
なんだか怪しさもあるが、テスターでチェックしたところピン配列も合っているし、さっそく、取り替えてみることに。

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電源を入れたとたん、ベース・エミッター間がショートとなり壊れてしまいました。ニュージャージから届いたものが一瞬でお亡くなりに。
取り外した三菱のものと比較して、明らかにおかしいです。

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SNSを通じて呼びかけてみても、どうしても2SC3133はみつかりません。そこで、2SC1969なら持っていると名乗りでた方に譲っていただきました。

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2SC1969はピン配列が異なるので、ケースを絶縁シートで浮かせて、ピンを曲げて取り付ける必要があります。結構難しくて絶縁チューブを入れることはできなく、空中配線となりました。

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LPFのコイルも、T-68-2を入手して巻き直しです。LCRメーターで測定すると、同一回数巻いたのだが、インダクタンスは少し大きくなりました。(発熱でコアが劣化したため?)

これでようやく、正常なパワーが出るようになりました。スプリアスもOKです。

<米国からの2SC3133は何か? >

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スグに壊れてしまった米国からの2SC3133、これは何か。拡大してみると、三菱のロゴが入っているものの、真ん中に E の文字が書いてあります。どうやら、これは台湾のELEFLOW社製を偽って三菱製としたフェイク品だということが解りました。

台湾⇒米国東海岸⇒日本の自宅 と渡ってきたようです。米国にあるからといって信用してはならないようです。

※今回で懲りたので、当方での個人輸入まで実施してパーツ調達は実施しないことと致します。あまりにも、リスクが大きすぎ仕事が進まないからです。

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2016年3月13日 (日)

IC-820D 430MHzが送信できない

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ICOM IC-820D 430MHzが送信できないとのことでお預かりしました。

まず、430MHzのPAユニットがある場所を開けてみると驚くべき事実が!!

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ヒューズをリード線でジャンパーするという、絶対にやってはならないことをやってありました。これは非常に危険です。SNSの知り合いにこの話しをしたところ・・・

・同様のことやって、クルマ1台、丸焼けにしたアホウがいた。
・バイクを1台燃やした人を知っている。


という反応がありました。

最悪の事態を想定し、ヒューズの後段回路を全てチェックしましたが、幸いにも焼損箇所は無く、電源ONしても大丈夫でした。ただ、何故ヒューズが飛んだのか、その理由がわかりません。触っているうちに誤ってショートさせヒューズが飛び、予備が無かったのでこのようにしたのか・・・。

いずれにせよ、火災にならなくて良かったです

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仕切り直して、パワーが出ない件を調査。ドライブ段まではちゃんと信号が来ているのを確認、そしてパワーモジュールを送受でON/OFFする電圧が来ていないことを突き止めました。

ここで思い出したのが、前の事例である「144MHz帯で送信できない」の430MHz側がNGであるのではないかと。

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回路を追ったところ、まさに同じところでした。Q43が430MHz送信時にONになりません

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デジトラ RN2425 ってなんぞや・・・調べたところ、800mAまで流せるPNP型Trで入手困難。じゃぁ、この回路を作ってやろうじゃないかと。

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2Aまで流すことができる2SA1020が手持ちにあったので使ってみることに。写真のように、470Ωと10kΩを使って等価回路を構成し、フラットケーブルで接続する手法としました。

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ターゲットはこれです。

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完璧ではありませんが、拡大鏡とピンセットでこのように引き出しテスト。ぱっちり430MHzが送信できるようになりました。

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絶縁して、裏側に回し、スキマに固定しておきました。

ネットを調べていくと、私と全く同様なことをして修理しているイタリアの方を見つけました。IC-820は、この回路に傾向不良があるようです。

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2016年3月 6日 (日)

FT-2312 その後⇒復活

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ドライバー段のパワーモジュールが破損した私有の FT-2312 1200MHz 10W機は貴重だし、もうメーカーから発売される見込みも無いので、どうしても修理したく、1Wハンディ機に使っているパワーモジュールを調べたところ・・・。

・ICOM IC-12N      ⇒ SC1043 (M67715互換)
・ICOM IC-12G      ⇒ SC1083 (M57787互換)
・KENWOOD TH-55 ⇒ M57787
・YAESU FT-104    ⇒ M57787

M67732は使っておらず、規格も微妙に異なるのですが、これらのジャンク品を入手して移植すれば、なんとかなるのではと期待を持って、ジャンク機を探すこととしました。

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某SNSでジャンク品募集を掲載してみたところ、ローカル局よりTH-55のジャンクがあるとのことで、早速譲り受けました。


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このTH-55は液晶表示が全く変わらない不動品でしたが、ちゃんとパワーも出て、モジュールは生きていることを確認。このまま修理すれば復活できそうでしたが、そこは思い切って開腹手術を実施しました。

FT-2312に移植したところ、規格の違うこのモジュールでも動作はOKのようだけど、まだパワーが出ません

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調べたところ、結局ファイナルのパワーモジュールもNGになっていることが判明。じゃぁ、こちらも移植手術ってことで幸いにも、コンデンサ液漏れが酷くて修理不能の TM-541 があるのを思い出し、これと同じモジュールを使っているので同様に移植することで、完全復活を成し遂げることができました。


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TH-55 + TM-541 = FT-2312 ということで、ドナー2台を使ったことになります。


終段とドライブ段のパワーモジュールが同時に壊れた理由を振り返って考えると、昨年の秋に、近所に誘導雷があり、バチッと音が鳴ったことがあり、電源ラインにサージ電圧が発生して、同時に壊れたようです。電源が入り受信もOKだったのですが、送信をやっていなかったので気がつくのが今になったということです。

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