TS-930S ドライバー段焼損
KENWOOD TS-930S お初にお目にかかる患者さんです。オーナー様は大切にお使いだったようで、非常にきれいな個体です。初めて触ってみる機種ですが、質感は大変良くなかなかの無線機ですね。
症状はドライバー段が壊れ、発煙したとのこと。KENWOODのサービスは部品(MRF485)の在庫が無いので修理不能で返却となったとのことです。どんな機種でも診てくれるKENWOODのサービス対応は、他に比較すると素晴らしいですね。
早速PA部を開腹してみました。MRF485に亀裂が入り、周辺部品が道連れを喰らって派手に炭化してしまってます。
オーナー様は、MRF485が入手難であることを理解しておられ、MRF485が使われているTS-930V(10W機)のファイナル部をオークションで落札し、当方に修理依頼されてこられました。 (こういう配慮は非常に助かります) 移植は成功。ソリッド抵抗は完全な炭の状態に。これはかなり発煙があった模様。基板の損傷も少なく、IPAで洗浄することで問題なさそうでした。 PA部のみでの動作テスト風景。正規の28Vを印加するのではなく、まずは12Vでパワーが出てくるか・・・。ディップメーターを信号源として、入力側に加えてみます。 詳しく調べてみると、D5のツェナーダイオードも道連れでショート状態になっていました。このツェナーは19Vなのですが、それが破損するってことは、MRF485のC, B間がショートモードで故障し、バイアスラインに、28Vがモロに流れ込んだようです。保護用のツェナーなので、手持ちの9Vの物を付けておきました。 12VでのテストはOKとなったので、正規に組み込んでテスト。ばっちり100W出るようになりました。 これで完了と思って全体のテストをすると、SSB/CW/FSKはOKなのに、AMのみが受信できません。複雑怪奇な配線図を見ながらチェックしていくと、AMフィルターを切り替えるSWダイオードがONせず、途中で信号が途絶えていることに気が付きました。これに、ほぼ1日費やすはめに。
しかし、直感的に見てゲインが少ない出力があまり出ない・・・。
ちなみに、この配線図はTS-940のものです。TS-930の配線図には、このダイオードが入っておらず、回路も多少異なっていて、ロットによってか、回路変更されたようですね。
ラインを追っていくと・・・なんのことはない、NARROW , WIDE の切り替えスイッチが接触不良を起こしていて接点洗浄することで、AMの受信ができるようになりました。
<追記>
MRF485は非常に入手困難なため、ネットには2SC1969が代用品ということで多数の記事が上がっていますが、2SC1969は12V系のトランジスタでVceo=25Vしかありません。28Vで使うと、規格オーバーとなります。MRF485はVceo=35V
なぜ「1969が代用品」となったか、ある海外のWebを調べると、2SC1969を代用とする場合は、28Vを3端子レギュレータで12Vにしてから使うように書かれていました。それが、そのまま使えると勘違いして広まったものと思われます。
メーカースペックはある程度の余裕を見て決められていることもあるので、そのまま代替しても壊れないこともありますが、私だったらそういうことは恐ろしくて絶対やりません。
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コメント
Vceoですね.
1969にそのまま交換は私も何台かやってしまっていますが,再修理のケースはいまのところありません.
その後FETを使ってますがアイドリングが大きいHi
電源電圧が30数V~40Vぐらいに跳ね上がったり電源が焼損して道連れということが多いような気がして,電圧調整用のトリマポットは気にしています.
投稿: Yamada | 2015年10月13日 (火) 20時23分
Yamadaさん
うーん、Yamadaさんとこで実績あるのなら大丈夫かも。三菱の石は、規格を超えて使っても壊れない、例えば違法CB用アンプに12V系の2SC3240を24Vで使っても大丈夫とかあるので、マージンが大きいのかも。
そもそも2SC1969もCB用で12VでAMコレクター変調を掛けている実機があるなら間違いなさそうですが。
それはそうと、ドライバー段が壊れるプロセスって何なんでしょうかね? 同じ故障が起きないよう、何か対策は無いか、他社の回路を調べたりしたのですが大きな差は無く、MRF485自体が壊れやすいとしか今のところ考えられないのですが。
投稿: JF3DRI | 2015年10月13日 (火) 20時50分
電源の不具合が先じゃないかな?と思ってます.
メータランプがなんか明るいな?と思うと33Vぐらいかかっているようなケースが何度かあります.
トリマポットが浮いて,保険のような(?)ツェナーが利いてる状態かと思います.
電源基板もよく焼けますが同時にMRF485やツェナーが逝ってたり,悪くするとファイナルも..ということが多いような気がします.
投稿: Yamada | 2015年10月13日 (火) 21時20分
電源電圧は真っ先に調べたのですが、問題なさそうだったので触っていません。確かに、安定化する前が40Vぐらいあって、恐ろしいですね。
いずれにせよ、28V系、50V系を使っている機種はPA部の不具合が多いように思います。
投稿: JF3DRI | 2015年10月13日 (火) 21時46分
このページいつも見ております。初めてのコメントです。
グッドタイミングの修理記事でした。追記はまるで私のために書いて頂いたのではと・・・
さて、2SC1969の件ではお世話になりました。
YBの知人にも電源電圧の件伝えていましたが、彼もそのことは了知していました。レギュレータは15V~18Vを推奨しました。
まだ彼の修理結果は聞いていませんが結果が届けばお知らせします。
Yamadaさんのコメントは参考になりました。
このページを彼にメールしておきます。日本語は理解できませんが、翻訳ソフトは色々あるので雰囲気はつかんでくれるかと。
こちらで全て翻訳するのは大変なので要点だけ伝えます・・・
投稿: DEGUCHI | 2015年10月14日 (水) 07時23分
1969のVceoは25V,Vcboが60V
実際のBreakdown電圧はベースのローディングによりこれらの電圧の間にあるのだろうと思います.
私はアイドリング流れてるんだし..再発したら再修理するし..という安易な考えのもと,そのまま使ってました.
FETに置き換えるのもやりましたがただでさえ多い発熱がさらに..Hi
投稿: Yamada | 2015年10月14日 (水) 15時41分
連投すみません
私なりに想像したストーリーが
http://yamada-radio-clinic.cocolog-nifty.com/blog1/2014/12/_ts940_04-609e.html
です.
2段階の経路かな?と思ってます.
『久しぶりにスイッチ入れたら煙が出て..』
『メータランプがチカチカすると思ったら..』
というケースが多いです.
電源のパワトラがショートすると42Vぐらいがモロにかかりますので怖いですね.
しかし,すべての電源を40Vから降圧して取り出すもんですから発熱が多いですよねえ.
投稿: Yamada | 2015年10月14日 (水) 16時06分