CF-50MR vs HY3K-SP6 50MHz LPF比較!
自作の50MHzリニアアンプには、これまでコメットのCF-50MR というローパスフィルターを使っていたのですが、長時間CWで運用すると、かなりの発熱があり、またこのフィルターは安くて入手も楽なんですが、減衰特性が良くないと、ネット上あちこちでレポートがあり、サガミエンジニアリングの HY3K-SP6 という3kW連続耐電力というものを購入しました。ホントウに特性が良いのか?ということで、所持している測定器で比較してみました。
HY3K-SP6、このフィルター、CF-50MR の3倍以上の価格。当初は、LPFの自作も考え、チェビシェフやらバタワースやら、カウアーなどなど、フリーの設計ソフトをダウンロードしてある程度の知識は付けたのですが、ハイパワーに耐えてくれる良質なコンデンサをどうするか迷ってしまい、結局、市販品を購入してしまいました。
品物には一応スペアナ+トラジェネでの特性写真と、RFシミュレータの特性図が付いていました。ただし、固体1個1個を測定したものじゃないようです。外観は大きいし、高級感が有って頼もしい感じがします。
注) お決まりですが、あくまで、個人的に測定したものであって、これが全てでは無いことを、ご了解願います。
両者の通過ロスの測定。パワー計で行うこととした。通過ロスは少ない方が良いのは確かですが、素通りっていうのもいかがなもんかと思う。ただし、ハイパワーになると、このロスが全て熱になるので、そのあたりの考慮も必要。
スルー状態にしてIC756の出力を80Wに合わせた。
まずは、50.2MHzとしてコメットのCF-50MRを接続。 70Wに落ちている。よって通過ロスは
70/80 = 0.875 = - 0.58dB
少し大きすぎる気もしないではないが・・・。
(位相を測定していないので、正確とは言えないけど)
つづいてHY3K-SP6。 75Wぐらいか・・・確かにCF-50MRよりロスは少ない。
75/80 = 0.9375 = - 0.28dB
仕様では 0.2dB 以下となっているのだが、こんなもんかな。
次に、減衰特性の測定を試みた。
残念ながらワタシのスペアナにはTGの機能が無く、SSGから 0 dBm の信号を入れてスペアナでレベルを測定していくこととした。48MHzから1MHzステップで周波数を上げていき、レベルを読み取る。
結構時間はかかったけど、特性を取ることが出来た。
右図の通り、CF-50MRは68MHz付近に「極」があり、一旦持ち上がるが、以降はちゃんと落ちている。HY3K-SP6は、60MHzを超えても、まだフラットだが、それ以降、急峻に減衰する特性で、添付されてあった特性写真どおりの結果が得られた。両方とも、第2高調波である100MHz付近は、-80dB以上でありR3261Cでの測定限界を超えている様子です。
更に高い周波数領域を見てみた。HY3K-SP6は、信号を全く検出することができず、このあたりは特性図どおりでさすがである。一方のCF-50MR、-40dBぐらいしか取れないとのレポートも有ったけど、私が持っているこの個体については、少しの漏れがあるものの、-70dBはクリアしており、思っていたより特性は悪くありません。これだけ減衰すれば、十分です。
おまけとして、CF-50MRの中をあけてみた。ビス留めの構造なんで簡単に開けることができます。( = 中身をいじれる!) みたところ、基本的な定K、チェビシェフなどではなく、直列共振らしきLCがあるので、極を設けていることが解る。また、コンデンサも、テフロンシートを使ってあり、悪くはなさそう。
ただ、高域で電波が漏れるのは、機械的な構造にあるように思えます。仕切り板が外側ケースと接触していなくシールドが不十分、スキマがあるので、ここから素通りするのだと見ました。このあたりに手を加えてやれば、更に特性が良くなると思います。ワタシの固体は、なんども開け閉めして、ビスを締めなおしたので、特性が良くなったのかもしれません。ロスは減りませんけどね。
最後に、ワタシが欲しい特性・・・っていうのは・・・
①極力50MHzバンド内でのロスは少ない。
②下の周波数(~HF帯ね)は、特性のあばれが有っても良い。
③50MHzの n次 だけ落ちる特性でも良い。(コムフィルター)
LPFの選択肢って少ないと思います。
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コメント
CF-50MRは私も持ってます。200W_AMPに使用してますが、値段の割にはまあまあかなと思ってました。当方も手持ちのトラジェネで測定済みですが、DRIさんの測定結果とほぼ同じで納得です。中身を拝んだことは無かったのですが、結構良い作りですねえ。
チョット通過ロスが気になりますが・・
投稿: jk1nmj@斉藤 | 2010年3月29日 (月) 21時59分
斉藤さん、こんばんは。
斉藤さんのWebで同様にいろいろなLPFを測定した結果を掲載されてますね。メーカー製のリグだと、まずLPFは必要ないのですが、リニアアンプを使う場合は必須だと思います。調べたところ単にLPFと言って奥が深く、納得の行く特性を出すにはかなりのノウハウが必要なようです。
コメットのCF-50MR、1kWpepとなってますが、500Wでもテフロンシートのコンデンサ発熱が多く、耐電力特性には疑問がありますが、減衰特性は、まずこれで十分だと思います。
そうそう、HF帯のLPFは、斉藤さんのWebにもあるベンチャーYA-1を使っています。ハイパワーで発熱もなく、また特性も良いようです。いづれ、機会を見て測定してみます。
投稿: JF3DRI | 2010年3月30日 (火) 00時00分
こんばんは。前にHY2K-SP6を買って、出先の研究室にあったHPのTG付きスペアナで特性を見ると、それは素晴らしかったです。亡くなったJA2NYKの鈴木さんが作っていたコスモのLPFには負けるものの、100Mで80dB以下まで行っていました。
でも第二高調波(2f)の耐電力は無かったみたいで、1kW免許を受けたリニアアンプにつないで、負荷はダミーロードで、一声、軽~くア゛ーッと言った瞬間にパシッと音がして水色の小さなコンデンサが壊れました。
これは純真無垢なお嬢様に対して自作のリニアがラフ過ぎたってことですが(笑)、ハムフェアでEUIさんに修理に出して、青色のコンデンサを全部耐圧の高い物に取り替えて、仕様的にはHY3K-SP6になったとのことでしたが、それ以来、お嬢様はもったいないのでお蔵入りしてます。
それと、前に片岡さんの所にも書いたかと思いますが、MRG151GなどのFETは特性が上の方まで伸びているせいか、出力200Wで2fが10W、3fが4Wなど、とんでもない出力が出ます。こういうのは普通のLPFでは燃えます。
それでfはLPF、2f以上はHPFで最後は10Wの無誘導抵抗でターミネーション型のLPFを作ったことがあります。ついでにちょっとおまけを入れたらさらに良くなりました。
あとケーブルスタブですけど、結構有効です。私の所では出力がπLなんですが、3f用のオープンスタブ(電気長で150.3MHzのλ/4)はπ回路に対して容量となるので、出力に入れるとSWRが悪化するため、π部分の出力側に入れて実験しました。
また2f用のショートスタブ(50.1MHzのλ/4、100MHzのλ/2)はfではハイインピーダンスになるので出力に入れられます。
これらで実験して、2fスタブのみで2fが16dB程度改善、2fと3fのスタブを入れて2fが14dB、3fが変化なし(もともと-75dB程度あったので測定限界以下)でした。
ということで、現在は2fのショートスタブだけ出力に入れています。2fのショートスタブは、最初は短縮率から計算するのも良いですが、最後は先端に銅板を半田付けしてカットアンドトライが必要です。でも完全に調整すると26dB程度は行きます。そこまで追求しなくても16~20dB程度は行くのでお奨めです。
この頃まではPC用の50MHzのクロックモジュールを使ったコムジェネでやっていたのですが、その後、手持ちのスペアナとセットのTGとリターンロスブリッジを格安で入手したので、色々見てます。
投稿: β教粗 | 2010年4月 1日 (木) 19時06分
β教粗さま、いらっしゃいませ。
HY2K-SP6のお話、どこかで見たことがあったなぁ~ということで探してみたらこちらJH4BTIさんのWEBにも同様な記述がありました。このWebの場合、アンプはIC-PW1ですね。
LPFを通すと高調波成分のエネルギーはどこえ行っていまうの?という疑問は以前からありました。LPFが発熱するのは、通過損失だけじゃなく、そのエネルギーが熱になることもあるのでしょうか。
同軸ケーブルによるトラップ、リニアアンプに内蔵しようと、私も考えました。確かにλ/4ショートトラップは2次の100MHzでゼロ、50MHzで∞になるので良いのですが、プッシュ・プルで3次が多いので150MHzのトラップはどうすれば良いのか、解りませんでした。
M/Mのコンテストで使うYAAトラップで21MHz用での7MHzキラーを逆にすればできそうなんですが、真剣に考えずじまいです。
投稿: JF3DRI | 2010年4月 2日 (金) 20時30分