(番外編)内部放電する3-500z回復!
コメント欄に書いているように、離調してプレート負荷をかけるのではなく、グリットにプラス電位を与えていくことでプレート電流を流して負荷をかける方法を行うことで、薄紫色の放電→電流暴走という症状が改善されました。RFを加えて負荷をかけるより、高周波電圧が無い分、電圧が低くなるためか放電が起こりにくくガス吸着がうまくいったようです。
自作の可変定電圧電源(6V~22V)をグリッドに直接つなぎ、6Vから徐々に上げていくと、プレート電流が増加していき、20V程度で約200m流れてくれます。(プレート電圧800V時)プレート損失が160Wになる計算ですが、このあたりからじんわりとプレートが赤熱してきます。
最初は放電が起こっていたのですが、放電が起こる寸前でグリッド電圧を上げるのを止める、あるいは低減することを行っていたところ、だんだんと放電が収まってプレートが赤熱しても大丈夫の状態へ回復することができました。
写真は、更にグリッド電圧を24Vぐらいに上げ、250mAぐらい流したときの赤熱ぐあいで200Wの損失時でも大丈夫となったものです。これ以上赤くするのは冷却面で少し不安があるので、この状態で2時間ぐらいエージング。その後、RFを入力して前回と同じようにしたところ、うっすらと薄紫色雲は発生するものの、電流暴走は起こらず、十分に使えることを確認しました。本格的にやるならもう少し負荷を加え(1000Vぐらいが適当かな)て時間も長くするのが良いと思われます。
※結構アブナイので、もし実施するに当たっては、高電圧と高温に十分注意が必要です。この記事を見て事故が起こっても当局は責任を持てませんので。
(エージングのあいだ中、ビクビクしながら気合を入れて見守っていました。)
※参考となったWebはW8JIのページ
http://www.w8ji.com/vacuum_tubes_and_vaccum_tube_failures.htm
でこの記事のGettering and Arcingのところです。
という訳で、貴重な 3-500z 1本 救済することがてきました。
※追記: W8JIの記事の要旨翻訳
(ヘタクソな翻訳ですがだいたいこんなもんかと・・・)
一般に、ガラスの内部にプレートがある真空管には、プレートにゲッタ材料をコーティングしているので、高温でゲッタを活性化するための動作をしなければなりません。
ガラス製真空管はシールからの漏洩と内部のガス処理の両方が真空管寿命が短くなる傾向を持っている。
漏洩するガスは、ガラスからではなく、むしろガラスを通して外部へ出す金属に使用されるKovar合金からです。(Kovar=コバール、ガラスと熱膨張率が同じ合金)
また、Kovarも錆びることがあります。 変に見えますが、ガラス送信管は乾いたところで保管するべきです。
そして、ガラス製送信管は、数ヶ月ごとにフルの温度(最大定格)で動作させるべきです。
ある条件の下でガラス管は低いプレート電圧と、グリッドをプラスバイアスにする動作ででリストア(元に戻す)することができます。
数時間、真空管を「調理」すること、すなわち時々許容されるフル動作のプレート温度に到達させることで。
私は約50%の確率で長年使用していない古い3-500Zの回復に成功しました。
初めはフル電圧で厳しくアークしましたが、低いプレート電圧とプラスを加えるグリッド・バイアスでプレートを色付かせる(赤熱させる)「調理」によって、真空度は回復した。
こういった文献や経験は、真空管製造技術者がいなくなった今日、大変貴重だと思います。
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コメント
おぉ、いけましたか! 素晴らしいです。高周波でドライブするより幾分かは安全にいけそうですね。Tom氏とこも今までそこそこ読んでたつもりやったんですが、しっかり「by running low anode voltages and positive bias on the grid」っと書かれていますね。50%の確率で、とも。処分するの早まったかなぁ(^^; で、今回のは最終的に500W+までいけたんでしょうか?
あとはアレですね、定期的に入れ替えてなおかつちょくちょく運用していただく、ということで(^^)
投稿: JI3KDH | 2007年9月18日 (火) 19時56分
真空管の扱いって良く考えると結構難しいです。通常の受信管やゲッタがある真空管ではこのようにプレートを赤熱すれば逆にガス放出が起こり、ダメにしてしまう。また、セラミック球では別の準備が必要ですからね。
このW8JI (Mr.TOM氏ですか)はパラ止めに関してもAG6Kと全く逆の自論を述べられており、素晴らしいOMですね。(回路シミュレータspiceを用いたり、ネットワークアナライザを用いて実測したり・・説得力は十分)
投稿: JF3DRI | 2007年9月18日 (火) 22時02分
あ、それと今思いついたんですが、3-500zリニアアンプに「リフレッシュモード」というのが有って、定期的にこの「cooking」を行うってどう??
TL-922だと、CWモードで倍電圧整流している中点からプレート電圧を出してくればちょうど良い。あとはグリッドに適当に電圧が掛かるように(あるいはフィラメントをマイナス側に振る)して、タイマーで数時間すれば切れる・・・なんてね。
コンテストでフルパワー24~48Hガンガンやる方は別として。
投稿: JF3DRI | 2007年9月18日 (火) 22時11分
あ、そのアイディアいいですね! ガラス球ならではの、目で見ながら焼き具合の調節できるVRも付けておきましょう! いやマジでちょっと考えてみようかな。
いくつかあっちのMLも読んでる(たいがいは流し読み)んですが、彼はホント「すごい」です。あまりにも的確すぎて嫌う人も少なくないみたいですが、小生などはコメントを見るたびうなってしまいます。そうそう、すでにご存じかも知れませんが、面白いページを紹介させて下さい。
http://www.w8ji.com/contest_station_w8ji.htm
ラッキーにもこの局と実際にQSOできたんですが、ムチャ強かったしごっつ耳がいい印象があったんです。あとでここを見せていただき、なるほどって感じでした。シャレもいっぱいで、小生には揚げ足取るところを全く見つけられません(^^;
投稿: JI3KDH | 2007年9月19日 (水) 05時32分
グリッドをプラスに振ったときのグリッド電流って、
どのくらい流れるものなのですか?
電圧源の内部抵抗しだいなのかな?
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2007年9月19日 (水) 08時51分
下間さん、まいどです。
え~っと、プレート電圧によってグリッド電流が変化します。詳しく
はデータシート
http://datasheets.electron-tube.net/sheets/088/3/3-500Z.pdf
の6ページ目にあるCONSTANT CURRENT CHARACTERISTICSのグラフをご覧願います。オーディオ用の出力管など殆どはグリッド電流を流さないA~AB1級で使いますが、3-500zのようなパワーグリット管は μ が大きく設計されているので、グリッド電流を流して使うのが普通です。
3-500zの場合、グリッド電流は約130mAが限界です。
投稿: JF3DRI | 2007年9月19日 (水) 23時04分